ご挨拶
サステナビリティ経営に対する関心が高まっています。地球や地域社会を始めとするステークホルダーに脅威を与える環境・社会的課題がより深刻になるにつれ、経済活動の中核を担う企業にその解決を期待する声が高まっているためです。経済活動が地球や地域社会に与える負荷は飛躍的に増大しつつあるにもかかわらず、企業がそれらにどれだけの影響を与えているのか、どれほど対応できているのか、その全容は十分に確認されているとは言い難いのが現状です。このため、近年、企業が環境・社会などのサステナビリティ課題にいかに対応しているのかについて、外部ステークホルダーに説明するための開示制度が整備されつつあります。
こうした変化を受けて、サステナビリティ課題が自社にもたらす事業機会やリスクを識別し、それらを持続的な企業価値の創造に結び付けることが企業にとって喫緊の課題となっています。とはいえ、サステナビリティ課題の解決を通じて、環境・社会の持続可能性を高めつつ、自社の企業価値創造を実現することは容易ではありません。そのためには、目まぐるしく変化するサステナビリティ課題や制度変化や規制の変化に関する情報を速やかに獲得し、それらを経営戦略に反映させる必要があります。それを通して社内外のステークホルダーの理解・共感を生み出すことが求められます。
こうした取り組みを推進するためには、それを企業内でけん引する“サステナビリティ・リーダー”の育成が不可欠となります。このため、一橋大学では、TCFDコンソーシアムと連携し、サステナビリティ・リーダーを育成するためのプログラムHTSLP(Hitotsubashi TCFD Consortium Sustainability Leadership Program)を開始することにいたしました。TCFDコンソーシアムは、気候変動の最前線で起こってきたさまざまな課題に対して、産官学で連携し、その解決を促してきました。また一橋大学では、CFO教育研究センターが運営母体となって、持続的な企業価値創造を担うCFO/CEO/経営者を育成するHFLPを2015年にたちあげ、数多くの価値創造リーダーを育成してまいりました。このたび新たに開設するHTSLPが目指すのは、サステナビリティ課題へ取り組みを戦略的に行い、「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」の両立を通じて、持続的な企業価値創造の実現をけん引するサステナビリティ・リーダーの育成です。
この要請にこたえるため、本プログラムHTSLPは、以下の3つの特徴をもっております。
第1に、サステナビリティ経営やESGへの取り組みを持続的な企業価値創造に結び付けるために必要となる実践的な知識・スキルの修得をめざしております。このためには、サステナビリティ経営を価値創造に結び付けるために必要となる気候変動、生物多様性、ビジネスと人権、サプライチェーン・マネジメント、ESG、財務・会計、金融、資本市場、シナリオ分析などの領域の最先端の知識を修得いただくとともに、それを価値創造に結び付ける取り組みを実践されているサステナビリティ・リーダーからも学ぶ機会をつくる予定です。
第2に、サステナビリティ経営をめぐる理論や最先端の研究成果をプログラムに反映させている点です。サステナビリティやESGに関してはアカデミックな世界も動いています。等プログラムは一流の研究者や海外のトップビジネススクールとの連携を通じて生み出した最先端のサステナビリティ経営に関する理論的研究成果をプログラムに反映させていきます。
第3に、日本におけるサステナビリティ経営をめぐる濃密な人的ネットワークの構築を目指しています。サステナビリティ経営の最前線で活躍するCsuOやサステナビリティ業務を担う組織のスタッフ、CEO、CFO、CHROのみならず、内外から高い評価を得ている機関投資家、証券アナリスト、ESG評価機関、公認会計士、弁護士などに講師として登壇いただき、異業種交流も含めた、濃密な人的ネットワークが構築できる「場」づくりを意識したプログラムとなっています。
欧州では、サステナビリティ課題への対応を促すさまざまな制度的な枠組みが整備されている一方で、米国では環境・社会課題への対応が「見せかけ」(Washing)であるとの批判があるなど、サステナビリティ経営をいかに進めるかについては世界的にみても未解決の課題であるといえます。
この点で本質的な観点から、サステナビリティ課題が企業に及ぼす影響を考え抜き、「社会のサステナビリティ」と「企業のサステナビリティ」を同期化させ、社内外のステークホルダーの理解・共感を促しながら、持続的な価値創造を牽引するサステナビリティ・リーダーの育成が喫緊の課題といえるでしょう。私たちは、TCFDコンソーシアムと連携して、日本経済を、ひいては世界経済を牽引するサステナビリティ・リーダーの育成を目指します。
プログラムの狙い
サステナビリティに関する専門知識を持ち、それを自社に適合させ、分析・評価し、経営者や従業員一人ひとりに対してサステナビリティ意識を浸透させる経営リーダーの育成
- 開示機関やESG 評価機関が提示するフレームワークは多様であり、自社にフィットするとは限らない。現在、取り組むべき環境・社会課題は何であるのか。また中・長期的に直面するであろう環境・社会課題は何であるのか。それらに対応するため、何に取り組むべきか。
- 環境・社会課題をめぐる開示やその他規制の動きは、グローバルなレベルでみるとめまぐるしく変化している。こうした変化をどのようにキャッチし、自社のサステナビリティに関わる取組みに反映させていくべきか。
- 環境・社会課題をめぐる変化を自社の収益機会やリスク事象ととらえ、それを自社の中長期的な事業ポートフォリオ改革や新規事業開発にいかに反映させるか。知財・無形資産や人的資本の投資をそれらにいかに連動させていくべきか。
- 環境・社会課題をめぐる課題への対応や意思決定が、中長期的に財務成果や社会的インパクトにいかに結び付いているか。それらをいかに測定し、社内外のステークホルダーからの理解・共感に結び付けていくべきか。
- 取締役会や経営チームで環境・社会課題をめぐる課題やそれへの対応をどのように討議するのか。自社の取組みの進捗をどのように測定し、それをどのように改善させていくべきか。それを報酬・指名などにいかに反映させていくべきか。
- 環境・社会課題をめぐる取り組みを効果的に実践していくためには、社員一人ひとりに自社における環境・社会課題の位置づけを明確に理解させ、それを意識した活動を積極的に展開いただく必要がある。こうした社員一人ひとりへの意識付け・啓蒙をいかに実践すべきか。
対象 |
サステナビリティ担当執行役員・
※サステナビリティ課題にご関心のある経営企画、IR などの担当役員・ |
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期間・頻度 | 2025年01 月~2025 年5 月(合計8 セッション)、月1~2 回程度(原則・2~3 週間に1度)、合宿1 回含む |
形式 | 金曜日夕刻(18 時~21 時)、土曜日終日(9 時~16 時) 全体で3 回程度Workshop を開催(土曜日16 時~19 時) 合宿(土曜日午前中から日曜日午前中まで) |
開催場所 | 学術総合センター中会議場(千代田区)、セミナーハウス・フォーリッジ(世田谷区)、ベルサール日本橋(中央区)、一橋大学国立東キャンパス 国立市)等 |